筋トレはメンタルヘルス対策になる? 若者のRCTと最新レビューから考える

ダンベルを使って筋力トレーニングを行う若年成人

「運動はメンタルにいい」とよく言われます。では、筋力トレーニングにも根拠はあるのでしょうか。今回は、若者を対象にしたランダム化比較試験(RCT)のメタ解析と最新レビューから、どこまで言えるのかを整理します。

ダンベルを使って筋力トレーニングを行う若年成人

26歳以下の10試験では、抑うつ・不安症状が改善

2024年の系統的レビュー・メタ解析では、26歳以下で抑うつまたは不安症状が高い人を対象とした10件のRCT、計376人が解析されました。筋力トレーニングは対照群と比べ、抑うつ症状(Hedges’ g=−1.06、95%CI −1.61〜−0.51)と不安症状(g=−1.02、95%CI −1.50〜−0.54)の低下と関連していました。原著(PubMed)

一方、研究間のばらつきは小さくありませんでした(抑うつ I²=79%、不安 I²=66%)。「誰にでも同じ大きさで効く」とまでは言えません。それでも、GRADE評価では抑うつ症状は高い確実性、不安症状は中等度の確実性と評価されています。

8週間・週2回のRCTでも改善が確認された

若年成人55人を対象としたRCTでは、8週間、週2回の筋力トレーニングを行った群で、待機群より抑うつ症状が大きく改善しました。全体での効果量はd=1.01(95%CI 0.44〜1.57)でした。原著(PubMed)

ただし、この試験の対照は「待機群」です。トレーニングそのものだけでなく、定期的に人と関わることや生活リズムが整うことなどの影響を完全には分離できません。さらに、2025年に報告された1回の筋トレと静かな休息を比較した試験では、直後の抑うつ気分の変化に群間差はありませんでした。原著(PubMed)。つまり、「1回筋トレすれば気分が即改善する」と単純化するのは適切ではありません。

WHOも筋力トレーニングを週2日以上推奨

WHOは18〜64歳の成人に対し、主要な筋群を使う筋力強化活動を週2日以上行うことを推奨しています。これはメンタルヘルスだけを目的とした推奨ではなく、身体的健康を含めた総合的な健康増進のためのものです。WHO Physical activity

職場のメンタル対策を「運動してください」で終わらせない

筋力トレーニングは、メンタルヘルスを支える選択肢の一つになり得ます。ただし、過重労働、人間関係、ハラスメント、睡眠不足など職場側の問題があるときに、本人へ運動だけを勧めても本質的な対策にはなりません。若手社員のメンタルヘルスの記事でも触れた通り、個人への支援と職場環境への介入は分けて考える必要があります。

企業のメンタルヘルス対策、就業配慮、産業医面談の設計については産業医・産業保健サービスをご覧ください。抑うつや不安が強い、仕事や生活に支障が出ている場合は、運動だけで対処せず医療機関へ相談してください。

参考文献