ホーム / 産業保健の知見

筋トレで頭も冴える? 集中力とワーキングメモリを調べた42人の試験

木の床に置かれたダンベルのモノクロ写真

筋トレの後、頭がすっきりして仕事に戻れた。そんな感覚は、研究ではどう捉えられているのでしょうか。筋力だけでなく、注意を切り替える力や情報を一時的に保つ力に注目すると、運動と仕事をつなぐ別の切り口が見えてきます。

42人を、負荷の違う筋トレと安静に割り付けた

Martinsらの2026年掲載の無作為化試験では、健康で活動的な若年成人42人(平均26.9歳、男性24人)を、1RMの75%の高負荷、推定1RMの50%の中負荷、安静の3群に割り付けました。1RMは、1回だけ持ち上げられる最大重量を表す指標です。運動前、直後、45分後に、抑制機能をみるストループ課題と、ワーキングメモリをみるNバック課題を行いました[1]。

高負荷群では、抑制機能と記憶課題の成績に改善

論文は、高負荷群のストループ不一致課題で効果量d=0.40、運動直後の2バック課題でd=0.80の改善を報告しています。中負荷群の2バック課題でもd=0.65の改善が報告されました。効果量は研究内の変化の大きさを示す数値で、「仕事の能率が80%上がる」という意味ではありません[1]。

筋トレ後の「頭の働き」を調べる。健康で活動的な若年成人42人。75%1RM / 50%1RM / 安静。運動前 → 直後 → 45分後。ストループ課題:抑制機能。Nバック課題:ワーキングメモリ。Martinsら(2026)/仕事の成果を直接評価した試験ではない

「重いほど仕事ができる」とは結論できない

これは少人数の健康で活動的な若年成人の、短時間の実験課題を評価した研究です。仕事の売上、ミス、長い会議での集中力を直接測った試験ではありません。また、報告された効果量だけを見て、高負荷が中負荷よりどんな人にも優れると決めることはできません。初心者が仕事前に重い重量へ挑戦する根拠として使うのも飛躍です。

企業で使うなら、休憩から戻りやすい環境づくりへ

実践への提案は、社員に高重量の筋トレをさせることではなく、身体を動かす休憩を選べる環境をつくることです。着替え、移動、汗、周囲の視線といった参加の障壁も確認します。利用者の「戻りやすかった」という感想と、実際の作業ミスや疲労は分けて評価し、参加していない人を不利に扱わない運用にします。

集中できない状態が続くなら、仕事量と睡眠も確認

集中力を筋トレの有無だけで説明しないことが、産業保健では大切です。眠気、気分の落ち込み、不安、業務量、休憩の取りにくさなども相談時に確認します。日常や仕事への支障が続く場合は、運動で押し切らず、医療機関や産業保健につなげてください。

関連する記事

筋トレとメンタルヘルスの研究を読む

職場の健康づくりをご相談ください

集中しづらさや疲労の相談を、職場環境の改善につなげたい企業担当者の方へ。 Tactical Medの対応内容は、産業医・産業保健サービスをご覧ください。お問い合わせはこちら。

参考文献

  1. Martins R, et al. Acute resistance exercise load modulates brain haemodynamics, working memory, and inhibitory performance. Behav Brain Res. 2026;497:115887. doi:10.1016/j.bbr.2025.115887. PubMedで確認
荒木琢登

AUTHOR

荒木 琢登

一般社団法人Tactical Med 代表理事・医師。内科・心療内科・精神科の臨床と産業保健、ヘルスケアプロダクトの開発・企業導入に携わる。

プロフィールを見る →

産業医・産業保健のご相談 →

記事一覧へ戻る →

コメントを残す