管理職向け研修を実施しても、現場で「相談を受けた後にどう動けばよいか」が決まっていなければ、知識を使いにくいままです。研修の価値は受講人数だけでなく、その後の対応と従業員の状況で考える必要があります。

オーストラリアの消防・救助組織で、病休を比較
2017年のクラスターランダム化比較試験では、管理職128人を、4時間の対面メンタルヘルス研修を受ける群と、研修を後に受ける対照群に割り付けました。追跡期間は6か月です。主要解析に使えたデータは、介入群の管理職25人・部下1,233人、対照群の管理職19人・部下733人でした。[1]
仕事に関連する病休の割合は、介入群で研修前の1.56%から0.28パーセントポイント低下し、対照群では0.95%から0.28パーセントポイント上昇しました。変化の群間比較はP=0.049で、論文は従業員1人当たり6か月で6.45時間の減少に相当すると報告しています。0.28%という相対減少率ではなく、病休割合の変化量です。[1]
すべての病休が減ったわけではない
同じ試験で、通常の病休割合の変化に有意な群間差はありませんでした(P=0.169)。また、主要解析に含まれた管理職は当初の割付人数より少なく、対象も一つの消防・救助組織です。日本のあらゆる企業で同じ効果が得られる、研修をすれば精神疾患を予防できる、と拡大しては読めません。[1]
2025年には、管理職向けオンライン研修Managing Minds at Workの実施可能性を調べた予備的クラスターRCTも報告されています。管理職自身の知識・自信などに改善が報告されましたが、実施可能性を検討する試験であり、従業員の病休を減らす効果が確立したと読むものではありません。[2]
研修内容を、会社の対応手順に落とし込む
企業で導入するなら、声のかけ方だけでなく、相談後の経路をセットにします。管理職が本人の困りごとと仕事への影響を聞く。医療的な評価が必要なら受診へ、就業上の配慮なら産業医へつなぐ。管理職と人事は、優先順位や納期、担当業務などの調整を検討する。この役割分担を研修の中で具体化します。
例えば「最近遅刻が増えた」という変化があれば、診断名を当てようとするのではなく、いつから何が変わり、どの業務に困っているかを確認します。その後の相談先、共有する情報、次の確認日を決めれば、受講後に現場で使う行動になります。
評価するときは受講率や満足度に加え、相談先を案内できたか、対応が止まったところはないかを確認します。病休の変化は人員構成や業務状況にも左右されるため、数字だけで研修の成功・失敗を決めつけないことが大切です。
関連する視点は、若手社員のメンタルヘルスを「打たれ弱さ」で片づけないためにでも取り上げています。
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参考文献
- Milligan-Saville JS, et al. Workplace mental health training for managers and its effect on sick leave in employees. Lancet Psychiatry. 2017;4:850–858. PMID:29031935.
- Web-Based Interactive Training for Managers (Managing Minds at Work) to Promote Mental Health at Work: Pilot Feasibility Cluster Randomized Controlled Trial. JMIR Ment Health. 2025;12:e76373.



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