従業員の腸を整えれば、ストレスも減るのではないか。脳腸相関への関心から、乳酸菌製品を福利厚生に取り入れる発想が生まれます。ただ、腸と心が関係することと、特定の製品を配る効果が確かめられていることは別です。
看護師600人の試験では、明確な群間差は出なかった
Slykermanらの2022年の無作為化比較試験は、看護師600人を、Lactobacillus rhamnosus HN001またはプラセボを摂る群へ割り付けました。終了時の質問に回答したのは484人、80.7%でした。ストレス、不安、心理的な健康状態の変化に、有意な群間差は認められませんでした[1]。
対象は2020年のニュージーランドで働く看護師で、感染症流行や社会環境が変わる時期の試験です。この結果から、全ての菌株に効果がないとも、別の製品なら必ず効くとも言えません。

2026年レビューは小さな平均効果を示すが、製品選びの答えではない
健康な就労成人を対象とする2026年のレビューでは12研究をまとめ、抑うつ、不安、ストレスなどの症状に小さな平均効果を報告しました。標準化平均差は−0.21、95%信頼区間は−0.34〜−0.09でした[2]。
これは21%の改善という意味ではありません。異なる尺度をそろえた効果量です。菌株、用量、期間が異なり、最適な製品や使い方は確定していません。複数の症状をまとめた平均値を、個人のストレスがどれだけ軽くなるかという予測に使うこともできません。
福利厚生として試すなら、効果を約束しない
製品を提供する場合は、メンタル不調の予防・治療を保証する表現を避け、利用しない選択も認めます。特定の菌株での試験を、全てのヨーグルトやサプリメントにそのまま当てはめないでください。
実務上の評価では、費用や利用率に加え、本人が何を期待して選んだか、困りごとの相談が遅れていないかを確認します。免疫機能が低下している人や重い病気のある人などは、自己判断で利用せず担当医に相談してください[3]。
お腹の相談と、仕事の相談を分断しない
腹痛や便通の問題を抱える人には、トイレへ行ける時間、会議の続き方、食事の取りやすさも確認します。強い腹痛、血便、体重減少などがある場合は、製品を試し続けるより受診を優先します。
メンタル不調が続く場合も同様です。食品を配る施策と、業務負荷の調整や医療への連携は別々に必要なことがあります。脳腸相関を生かすなら、製品だけで相談を終わらせない運用が重要です。
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参考文献
- Slykerman RF, Li E. A randomized trial of probiotic supplementation in nurses to reduce stress and viral illness. Scientific Reports. 2022;12:14742. doi:10.1038/s41598-022-19104-9.
- Ben Fredj S, et al. Probiotic intake and mental health in healthy working adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Psychology. 2026;14:175. doi:10.1186/s40359-025-03885-5.
- NCCIH. Probiotics: Usefulness and Safety. 2026年10月26日確認.




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